Salesforce Surveysによるアンケート機能の実装を検討してみました。検討の結果要件を満たせないという結論になったのですが、Salesforce Surveysで何ができて何ができないのかざっくり確認できたのでまとめておきます。
Salesforce Surveysとは
Salesforce標準機能のひとつでシンプルなエディタでアンケートの仕組みを実装できる機能です。
自分の環境で試したいという方は初期設定方法はこちら。たぶんまだ動く。
今回の検討要件
- 顧客(取引先責任者)にアンケートメールを送付
- アンケートには入力フォームリンクがある
- 顧客はリンク経由で入力フォームアクセスして質問に回答
- PCまたはモバイル端末のどちらでもアクセス
- 顧客はコミュニティユーザでは無い
- 回答結果は取引先責任者に紐付く
- 回答結果は回答者ごと、質問ごとに集計可能
ざっくり上記のような感じ。一般的なサービス運営でよくある仕組みです。
今回確認できたこと
Salesforce Surveys機能の対象者の制限
Salesforce社としての仕様は下記のとおりです。ヘルプの記載とサポートに相談してもこのように回答頂けると思います。
Salesforce Surveysの対象者はCommunity Cloudユーザです。それ以外の取引先責任者へもアンケートの送付は可能ですが、その場合は回答者の識別ができません。(匿名アンケートになる。)
アンケートの招待のページで匿名のON/OFFの設定がありますが、URLが共通のことからもコミュニティユーザでない場合は回答者の識別ができないというのが正しいと思います。
回答者識別の裏技
Salesforce社の回答は上記のとおりですが、裏技的な方法で紐付けが可能です。下記のカスタマイズができます。
- アンケート機能のオブジェクトは取引先責任者の参照項目を追加ができる
- アンケート機能のオブジェクトに対してプロセスビルダーの設定が可能
サポート外の方法ですが、裏側でガチャガチャ設定することで強引に取引先責任者との紐付けが可能でした。
レポート集計とアンケートオブジェクトの構成
上記の通り強引な方法で取引先責任者と紐付けることができました。続いてレポートの集計処理です。まずアンケートの情報は下記のオブジェクトで管理されています。
- > アンケート
- > アンケートの招待
- > アンケートの回答
- > アンケートの招待
アンケートで枠を管理し、招待で取引先責任者にアンケートを送付。招待に対して回答が紐付くという形です。通常の用途では一つの招待に複数の取引先責任者が紐付く仕様ですが、上記の強引に取引先責任者を紐付ける方法の場合は、一つの招待に対して一つの取引先責任者という形で管理することになります。Salesforceのデータ上はアンケート回答者の特定はできませんが、招待と回答が1対1になることで事実上特定ができたという考え方です。
データ上は用意できますが、問題はレポートによる集計です。アンケートのレポートはカスタムレポートタイプを用意することで作成可能になります。
ここで問題が発生しました。この方法で集計する場合のデータ型の問題です。アンケートの回答でスコアなど数値での回答は平均値などの集計が必要になりますが、この方法での集計の場合、数値という認識はされないため、平均値などの算出ができませんでした。結果としてその顧客が選択した値の認識が実現できるだけでレポートへの集計は実現できないという問題があります。
補足としてSalesforce Surveys本来の使い方としては分析機能で回答を確認するという使い方が用意されています。
強引に回答者識別の方法についての感想
プロセスビルダーなどで独自カスタマイズを組み合わせることで一見コミュニティユーザ以外の取引先責任者向けに回答者を識別できるアンケートの仕組みを実現できそうでしたが、結果としてSalesforce Surveysでの分析機能が活用できず、またレポートなどの回答結果の集計が不可であるという結果でした。
もちろん数式項目を組み合わせることで、強引に回答結果を数値変換する方法など実現自体は可能かもしれません。ですが、Salesforce Surveysを利用するメリットとしては複雑なカスタマイズを必要としないアンケートの作成が一番の理由と思いますので、アンケート作成のたびにプロセスビルダーの設定や数式項目作成が必要になるとすればSalesforce Surveysを使用するメリットは無いと思われます。
その他の確認できたこと
回答結果のカスタマイズ
回答形式で評価の場合は選択肢の下のテキストをカスタマイズできます。
ですがNPSなどの一部の形式ではテキストのカスタマイズができない仕様となっています。
アンケートのデザイン
アンケートのデザイン部分のカスタマイズですが、HTMLなどによるレイアウト変更はできないようです。変更可能な部分として背景画像の変更ができます。アンケートにロゴの表示やヘッダー、フッターの設定を行いたい場合はそうした背景画像を用意することになります。ちなみにこの背景画像はSandbox作成時に引き継がれない情報となります。
必須や分岐制御
必須チェックや分岐制御は可能となっています。
モバイル表示について
レイアウトのカスタマイズに縛りはありますが、モバイルレイアウトが可能になるというメリットがあります。
Salesforce Surveysの代替案
上記のとおり、コミュニティユーザ以外にアンケートを送付するという要件の場合、Salesforce Surveysを使用するのはあまり適切ではありません。そこで代わりの方法ですが3つの選択肢があります。
Salesforce以外のサービスを利用する
アンケートの仕組みを用意するサービスはいくつかあります。こちらを利用することでカスタマイズ性の高いアンケートの仕組みを用意することが可能です。ただし、Salesforceとのデータ連携をどうするかが課題になります。たとえば特定の商談フェーズまで進んでいる取引先責任者に対してメール送付といったことを実現するのが難しくなります。
AppExchangeで対応
こちらもいくつか用意されています。Salesforce社もGetFeedbackというサービスを利用しているみたいです。(サポート利用後のアンケートがそうでした。)
GetFeedback: Surveys for Salesforce - GetFeedback - AppExchange
尚、GetFeedbackは海外のサービスのため日本語でのサポートが受けられない可能性があります。日本のパートナー企業がアンケートの仕組みをAppExchnageで提供しているのでそちらも確認してみると良いかもしれません。
Force.com Sitesで開発
自分達の組織に合わせて使いやすいアンケート機能を構築するのであればForce.com Sitesの仕組みで構築するのが良いと思います。独自開発が必要になりますが柔軟なカスタマイズが可能になります。
Salesforce Surveysの費用
最後にSalesforce Surveysの費用感です。Salesforce Surveysはアドオン機能で追加ライセンスの購入が必要になります。作成するアンケートが1つの場合は追加ライセンス無しで運用できますが、2つ以上の作成からライセンスが必要になります。数ヶ月前に導入検討で相談したときに費用の有無は不明ですって状態だったのであまり導入してるところは多くなさそうですが、とりあえず導入検討するときにはSalesforce社に問い合わせすると要件の確認等対応してくれると思います。